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夜、眠る前。
次の朝が楽しみだ。
よく眠った後の伸びは最高に気持ちがいいから。
明日はなにか、美味しいものが食べられるだろうか?
寝床から出たら、一番に何をしようか?
もしランパスに頭を叩かれずに一日過ごせたら、
明後日は駅の向こうの公園へ行って、お気に入りの花壇で昼寝しよう。
そんな事を思いながら何回目かの寝返りをうつ頃には、
まぶたは重くなってしまう。
「……お前いっつもそんな事考えて寝んのか?」
三日前の風の強い日に新しく拾ってきたタオルに包まって…
三毛猫は横抱きしていたもう一匹を仰向けにさせ、
それに向かい合うように膝をつく。
「そんな事ってなんだよ、いいじゃんかぁ」
猫それぞれだろ、と口を尖らせてクリーム色の耳をぱしぱしと振るってみせる…
身体のサイズはともかく、仕草も言葉尻もまだ幼い。
『夜になるのが待ち遠しかった』と言ったオスの三毛猫に
『オレは朝が待ち遠しいよ?』と首を傾げて言ったのは、
身体のサイズ“だけ”は成猫並なオス猫。
「そ・お・だ・け・ど」
見下ろした先であんまり可愛らしい顔をするので、
三毛猫はどうしてくれようかと思った末に…
お互いの額をくっつけて…ぐりぐりと擦り合わせた。
「わーっなんだよ、いたたたたっ」
「痛くねーよっそんなに強くやってないだろ」
「…いたいよっギルの石頭!」
押し退けようとする手を振り払い、やや濃い色をした頬の毛並を舐めてやる。
「…う~…」
ぴたりと抵抗する手が止まったので、そのまま誘うように口付けた。
「……ン…ッ」
すぐに腕が首にまわされたので、
クリーム色の頭を抱えるようにして舌を絡める。
「…んん…っ…」
耳のふちをつまんで内側を指の腹で撫でると、びくりと首がすくめられた。
「…ふ、ぁ…っ」
口付けから解放すると、白い首が仰け反って小さく喘ぐ。
「…オレはな、お前と早くこうしたかったって話をしてんだよっ」
耳を弄ぶ手はそのままに、顔だけが少しずつ下へズレていく。
濃い色と薄い色と…毛が交じり合う肩に何度か軽く噛み付きながら、
己の言わんとしていた事を主張した。
「ぅ、ん…そう言えば、いいじゃんかっ…」
「…んーまあ、そうなんだけど」
コイツに遠回しな言い方でかっこつけたりしたのが間違いだったんだな…と
情けなくも納得してしまったので溜息をついてみる。
「…コリコぉ」
また何が情けないって…
「んーにゃに?ギルバート」
まったくもって惚れた弱みだ。
ふにゃりと笑ったクリーム色をぎゅうと抱きしめて笑い返す。
「おれ、お前のそーいうバカっぽいとこすっげえ好きなんだよな」
昼間に外を走り回るのもいいんだけど、
こうして顔をつき合わせて喋ると、すごく近くにいて。
だから、夜が待ち遠しかった。
「おれも、ギルのこと好きだよ」
抱きしめて。
転がって。
まるでじゃれあってるようにしか見えないのだけど。
徐々にただの“じゃれあい”ではなくなっていく。
「……ぅん、んっ…ゃ、ギルぅ…」
撫でられると幸せで。
舐めてくれたら嬉しくて。
これはその延長…だと思うんだけど。
「…コリコ、脚広げろよ」
声聞かれるのとか、アチコチじっと見られるのとか恥ずかしいけど、ギルだから平気。
そもそもギルが見たいって、聞きたいって、言うからだよ…これはコリコパットの言い分。
「…ココとかどおだ?」
「…ン…ッ?」
何の為に夜中まで待ってたと思うんだ、声くらい聞かせてくれても損しないだろう。
どうせ声出るのガマンできないくせに。
つーかあんましカワイイこと言うなよな…これはギルバートの言い分。
天井を見上げて喘ぐコリコパットの脚の間。
膝立ちで屈んだギルバート…抱えたコリコの膝裏あたり。
短めの毛をかき回すように舌で探ってみる。
「…ひゃ、ぁ…っ」
舐めたのは片方の脚だが、同時に両脚がびくんと突っ張った。
面白いのでそのまま同じところを舐めつつ、コリコパットの表情をうかがう。
以前は顔を両腕で覆ってしまって見えなかったが、
何度かの“指導”の末にコリコパットは敷いてあるタオルを掴むようになった。
「…ぁ、ぁ…ぁ…っ」
刺激により反射的に逃げそうになってる脚を抱え込むと…
放したくないギルバートの気持ちを察してか、
コリコパットは跳ね上がる脚に力をこめて堪える。
そのコリコパットの様子を、ギルバートはとても愛しく思う。
「…気持ちいいか?」
「…ん、わ・かんな…ぃっ…」
分かんないなんて事もなかろーよ、と思うのだが…
いやコイツならあり得る、よく分かってないかも知れない。
まあ追々分からせればいいか…などと勝手に考えながら、
膝の裏の筋を見つけたので頭を横に倒して軽く噛んでみる。
「…あっ…ッ…!」
一旦、つま先までがぴんと伸びて…それからコリコパットの全身から力が抜ける。
「…やぁ…なんか、それダメ…ッ」
脚を上げる事もできなくなったようで
途端に重たくなったそれらをギルバートは肩からおろした。
身を乗り出して、今度はやんわりと額を付ける。
「気持ちよくない?」
「……んん~…いい、かも…っ」
だろ?と得意気に笑って、目を細める。
ギルバートのその顔がコリコパットは大好きなのだが、
大概この顔にお目にかかる時は結構切羽詰ってるので、きちんと伝えた事は…まだない。
「ね…ギルぅ…」
「んんー?」
返事をしながらもギルバートは次の段取りで頭がいっぱいだった。
コリコパットの言おうとした事が口から出るより先に、
ギルバートの舌がコリコパットの尻尾の裏側に届いてしまう。
「…ひぁっ…ッ」
入れたくてしょうがないソコを、できるだけ丁寧に舌で撫で回す。
「…ぅ、んんっ…ぁ、ぁ…ッ」
結局今夜も、コリコパットの思い届かず。
与えられる快感に身悶えているうちにどうでもよくなってしまって。
首を噛まれて、身体に力が入らないと自覚した時にはもう、たくさん舐められたソコをギルバートが押し広げた。
“痛い”と“気持ちいい”が…こんなに似てるなんて、変なの。
そんな事を思いついてしまう。
「…ぁ…っあ、ぁ…ゃ、ギル…ッ」
目で見るより、手で触るより、中に入ってきたギルバートは大きくて、熱くて。
何度確認しても、どうも納得いかない。
「…痛いか…?」
小さく揺すっていた動きを止め、しがみついてくるコリコパットに問い掛ける。
「…んっ…」
ぷるぷると振られるクリーム色の頭、耳はぺたりと寝ている。
「…ちょっと一回、離れろって…っ」
首に回された腕はこれでもかと力が入っていて、顔も見えない。
腕立て伏せをするような格好。
上半身でもう一人分支えて…日頃の鍛錬のタマモノだな、と
軽く自己満足しながらコリコパットの背中を床に敷いたタオルに下ろす。
「…ほら、手の力抜け」
「…ッ…だって…ぇっ」
泣いてこそいないが、ぼんやりと潤んだ目で見上げられると愛しさが倍増した。
その顔のクリーム色と茶色の境目あたりを何度か舐める…これは愛情表現。
コリコパットは、いつも通りに顔を舐められたのが嬉しくてふにゃりと口元が緩んだ。
「…ギルぅ~」
ギルバートは呼吸を整えながら、
気を抜けば動いてしまう腰をじっと落ち着けて、コリコパットの話を聞く。
「んー?」
あー
ヤリたいんだけど。
「…なんかさぁ、ギルの…」
「んー」
うー
イキたいんだけど。
「ギルのがいっつも、オレが思ってるより大きくて、びっくりするんだ」
「……へ?」
「…でも、平気…っキモチイイから」
笑顔のままそう言って、小休止とばかりに投げ出されていた脚をまたギルバートの腰に絡める。
「…~ッ…お前なぁ…っ」
もう知らない。
ガマンしてやんない。
てゆーか、できそうにない。
「…ぇ?…っあ、んゃ…ッァ、ぅんんっ…んっ」
ちょっと乱暴なくらいに腰を動かして。
「お前、な…あんましカワイイこと言うと、めちゃくちゃに、するぞ…っ」
いつも想像するよりずっと狭くて熱いソコに、自分のを突き入れて、擦り付けて。
ずっと待ち遠しかった。
抱きたくて。
交わりたくて。
それでも夜を待ったのだから、随分紳士だろう?
でも、あんなに待ったのに…いざ始まると、すぐに終わりが近付く。
なんだか悔しい。
しかしいつまでも続けられないので…
体を起こして、コリコパットのもう一つの熱を握ってやる。
「…ぁぁっ…あ、もう…いい、の…っ?」
「…イっちゃえよ、そしたら俺も…っ」
だいぶ慣れたとはいえ、後ろへの刺激だけでは快楽と呼ぶにはまだ弱くて…
それでも全身が興奮してるから、前に触れば絶頂はすぐそこだった。
「…ぁ、ぁ、ぁ…ッダメ、もうダメ…ッ!…や、ギル…ッ」
ギリギリまで近付いて。
お互いの熱を擦り合わせると。
何かが弾けた。
そうしてしばらく経つと、荒い呼吸が徐々に緩やかになってきて。
2匹で同時に深く息を吸い込む。
何か決まりがある訳ではないのだけれど、自然とこうなる。
吸い込んだ息を吐き出しながら、それすらもほぼ同時に終わるのに気がついて。
「……ね、ギルぅ」
「…んんー?」
ああ、今度こそちゃんと言える。
さっきまで思いついたことがいくつかあったけど…それはもう忘れちゃったんだけど。
「…ん、あのさっ…おれたち、いっつも終わった後にさ、一緒に深呼吸するよね」
なんだか嬉しくなってて、言葉の最後の方はもう笑いながらのコリコパット。
「んん…そう、かな?」
「そおだよ…っぁ…」
コリコパットの首を噛んで、自身を引き抜くギルバート。
そのままの体勢で、何度もコリコパットの顔を舐めてやる。
「…ん…ふふっ…くすぐったいよ、ギル」
ふにゃあ、と甘い声で鳴きながら笑うコリコパットも、ギルバートの頬を舐め返す。
「コリコ」
「んん?」
「もっかい、しねえ?」
今度は、もうちょっとゆっくり。
コリコの耳を噛みながら囁いた。
「……ッ…ん、する…ぅ、あ…っ」
返事を聞くより先に、コリコパットの身体をひっくり返して背中を舐め上げる。
「…ココ、気持ちよくね?」
ああそうだ。
何度も何度もこうやって。
疲れ果てて眠っちゃえばいいんだ。
「…ぁ、ぁ…や、ギル…っ」
「…イイコト思いついた」
今夜ぐらいは、コイツが寝る直前に、俺の事だけ考えてればいいなあ…なんて。
そう思ったから…でも、口には出さずに。
多分、今こうしてる間は俺のことしか考えられないはずだから。
「…ぅん、ん…ぇ、なに…っ?」
朝の伸びより。
明日のメシより。
昼寝の場所より。
「んんーなんでもない」
また次の夜が待ち遠しいって、お前も思えばいいんだ。
まだ夜は長いから。
朝がくる前に。
眠りにおちる瞬間。
お前が俺の事だけでいっぱいになってたらいい。
三毛猫は、腕の中の大事なクリーム色の背に顔を埋めて笑った。
END
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