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三匹のハイエナが久し振りのまともな食事にありついて、古くからの友人と呼ぶライオンの悪巧みの計画に高揚しながら巣へと帰ろうとしていた。
一匹が立ち止まり、自分の尻を見て顔をしかめる。
「…くっそ、腹立つな!なんで俺がこんな…」
聞こえよがしに文句を言ってみるが、その文句を聞かせたい対象は、さっき食べたシマウマの味を思い出して笑っているだけだ。ライオンの前足の力強さを思い出して奥歯を噛みながら、呑気に歩いてくる弟分の彼を睨みつける。
「おい、エド!」
自分が呼ばれたと分かったので、彼は大きな声で返事をして近付いてきた。
「お前が余計なこと言ったおかげで…どうしてくれんだよっ痛ってーだろ!」
「うるっさいねぇバンザイ、それくらいで喚くんじゃないよ」
寝床へと急ぐ彼女が咥えたシマウマの脚の骨を、二匹のオスは涎を口に溜めながら羨んだ。しかしハイエナという動物の力関係において、メスの権力はオスのそれを凌駕している。だから『うるさい』と言われたバンザイは、とりあえず黙ってエドを睨みつけるほかない。
「ま、確かに気の毒だけどね……ああエド、あんたバンザイの尻舐めてやったらぁ?」
「シェンジ!」
冗談だけ言い残して、彼女は自分の巣穴へと消えた。
バンザイも足早に自分の巣穴へ入ると、何故か追いかけて来るハイエナが一匹。
「なんだよ、エド……はぁあ?!ばっか、お前…あんなのウソに決まってるだろ、ちょ……あっち行けよ!」
バンザイが傷を隠そうをすると、エドが飛び掛ってきたので地面に尻が触れて痛みが走る。思わずバンザイはエドの顔を前足で引っ叩き、巣穴の奥にうずくまった。
「…くっそぉ」
ぷるぷると頭を振ったエドはしばらく自分が何をしていたか忘れていたが、バンザイの姿を見て思い出す。今度はさっきよりは穏便に彼に近付き、まだじわりと血の滲む傷口を見てきゅうきゅうと鼻を鳴らした。
「そうだよ、いてーよっ…お前のせいだからな!」
もう面倒になって脚を投げ出したまま転がっているバンザイの傍をウロウロしたエドは、彼の傷口を慌てて舐め出す。バンザイはもう一度、しかしさっきほど強くなくエドの顔を前足で押しやって、ゆっくり舐めろと睨む。
そうして傷口の周りで固まりかけた血を舐め終わる頃にはバンザイが何も言わなくなったので、エドは逆に不安にかられて鳴く。するとバンザイは尻尾でエドの頭をパシンと叩き、目を開けた。
「ばーかっ…こんなんでしなねーよっ」
でも痛いんだからな、と不機嫌を丸出しにして威圧すると、エドは大きな身体を小さくして再度傷口を舐め始めた。そして徐々に痛みが和らいできたバンザイは、昼間に暴れた疲れもあって睡魔に襲われる。
睡眠と覚醒の合間を行ったり来たりしているバンザイの傍で、エドは自分が何に没頭しているのか見失いつつあった。いつもならエドがそうなるのをバンザイは知っているのだが、今日は緊張感を保っていられなかったらしい。
「……ぅあっ!痛…ぇっ」
バンザイが異変に気付いた時、エドは血の匂いに興奮してしまっていて、鼻息を荒くしながらバンザイの後ろ脚を抱えてその付け根に噛み付いていた。彼の尻尾は背中側にピンと向けられ、性的な興奮状態を示している。
「ばぁ……っか!!おい、エド!!」
もう片方の後ろ足でエドの顔を蹴飛ばすが、今はいつも程には力が入らない。しかし怒鳴りつけられたエドは、バンザイを怒らせてしまった事は理解する。一旦彼から離れて足踏みすると、切なげな声を上げて再度近付いた。
「知らねえよ!お前が欲情すんのにいちいち付き合ってられ……って、聞けよ!待っ…ゃ、エド…ッ」
どちらかと言えば体格ではエドに分があって、バンザイは今手負いで……しかしそういった事を加味しても、本気で彼が弟分ともいえる彼を自分の巣から追い出そうと思えばできない訳ではないのだが。
そこまでしてしまうほど、このどうしようもない相手が嫌いではないというのが、彼の悩みだった。
「ハッ……ァ、あんま何度も噛むな…っ」
うつ伏せの状態に圧し掛かられ、背中というか首というか、相手をおとなしくさせようとする本能でエドは幾度も噛み付いてくる。しかしどうにも的確でない彼の歯のあたりどころにバンザイは苛立つ。その上すっかり興奮した股間を擦り付けられて、不本意ながらもそれを待っている自分に気がついてしまったので、受け入れるしかない。
しかし一応言葉の上では現状を全力で否定する。
「言っとくけどなエド!……お前がガマンできねえって言うから、させてやってんだからな…ッ」
言い終わる頃、エドが何度目かに甘噛みしてきた場所がちょうど良くて、バンザイは顔を上げようと突っ張っていた前足に力が入らずに崩れた。
「…ぁ…ッ…ちょ、聞ぃ…てんのか、よっおまえが…ぁあっ」
強引にバンザイの中へと衝動を押し込んだエドは、その少し前に言われた事を遅れて理解する。
「……っ…エド…!」
搾り出すような低い声で凄まれたエドは、笑って頷きながら大きな声で返事をした。
End
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