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「ほら福井ラダメス、できたぞ花かんむり」
「…あにうえー」
「うん?」
「うまくできません…」
「見せてみろよ」
「やっ…ダメ!」
肩につくくらいの黒髪、まだ幼くて時には幼女と思われる事すらある弟は、
咄嗟に自分の作ったものを兄の目から隠す。
「交換する約束だろう?」
「…でも、こんなの欲しくないでしょう?」
エジプトの宰相の息子で兄の阿久津ラダメスは元々朗らかな性分ではあるが、
特に弟に対する態度は周囲から見ても格段に柔らかく温かい。
「欲しいかどうかはオレが決める」
「…はい」
不思議と器用な兄と、笑えるほど不器用な弟。
色とりどりの花を繋いだ輪を頭に乗せてもらいながら、
福井ラダメスは自分の作ったそれを寂しそうに見つめた。
「オレはもし、王冠と引き換えにその花かんむりをくれと言われたとしても…誰にもやらない、そのくらい欲しい」
「…ほんとに?」
ああ、と頷いて頭を差し出す兄。
弟の小さな手が編んだ花かんむりは、
どうも大きさも誤っていたらしく…兄の頭を通して首元に収まる。
「…あ」
兄は俯いた弟の頬を両手で包み、額に口付けた。
「ん、この方が走り回っても落とさないから良いかもなっ」
だからそんな顔をするな、と言う兄の言葉が嬉しくて…
けれど何か言おうと口を開くと泣いてしまいそうな気がして、弟はただ唇を噛んだ。
兄は弟がもう落ち込んではいないと分かったので、立ち上がって小さな手を引く。
「帰るか、そろそろ父上もお戻りだろう」
繋いだ手のひらは、温かかった。
「という幼少の頃を思い出して作ったから、お前にやろうっ」
日課である兵士の訓練、確かに居たはずの兄がいつの間にか姿を消し…終わった頃に戻ったと思ったら、手には輪にして繋いだ花かんむり。
満面の笑みで弟の汗まみれの頭にそれを乗せ、以前より広くなった額に口付けた。
「似合うぞ、福井ラダメス!」
「…お前はなんでそうやって…ッ」
真っ赤になって兄の手を振り払う。
しかし、かぶせられた花かんむりに手をやって…
しかしどうすることもできずに、それを頭に乗せたまま小走りに去る弟。
入れ替わりに現れる黒い集団。
「我が弟ながら、かわいいヤツ」
「我が息子ながら、いじらしいヤツだ」
周囲の兵士達は、愛すべき真面目な将軍(弟の方)のために、全てを見て見ぬフリをした。
END
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