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今日も今日とて、この親子。
「父の命令だ」
「嫌です」
「何故だ?!」
「何故もなにもありません、出て行ってください」
「…どうしても、か」
「父上が出て行かないなら、私が出て行きます!」
「なんだとっ待…」
父の言葉を背にして上着を手にしたのは、将軍・福井ラダメス。
「そーんな事だろうと思って迎えに来たぞっ福井ラダメス!」
部屋の出入口を固めていた黒い集団を押し退けて現れたのは、兄・阿久津ラダメスだ。
「おやすみなさい…父上、兄上」
黒い塊が割れたのは好都合と、その脇をすり抜けていこうとした弟を、長い腕が引きとめる。
「なんだ冷たいな福井ラダメス、過日はあんなに熱い夜を過ごしたというのに…」
芝居がかった声で言い、捕まえた弟の額にキスをする兄。
父は勝手に潜り込んでいた息子のベッドから出てくると、わなわなと震えた。
「な…!阿久津ラダメスとはそんな風にして、何故父とは寝られんのだ?!」
「おかしな言い方をするな、阿久津ラダメス!!」
真っ赤になって大声を出す弟を、兄は殊更強く抱き締める。
「父上、福井ラダメスは相変わらず7ならべが苦手なんですよ」
昼寝をし過ぎて眠れなかった兄に付き合って、真夜中に七ならべをしたのは事実。しかも馬鹿正直にどんどん手札を並べてしまうので、兄がギリギリ端の数字を止めているのに気付いたのは明け方だった。
「なんだ、七ならべか」
「やだなぁ、何だと思ったんですか父上ぇ~あはははっ」
阿久津ラダメスは、ちなみに…と言いながら、腕の中の福井ラダメスの身体を反転させて後ろ抱きにする。父・ゾーザーと兄弟ふたりが向かい合う形。
「ちなみに福井ラダメスは、右耳の後ろが弱いんです」
弟の幸の薄そうなみみたぶの裏に、ちゅっと音を立てて口付けてから囁いた。
「…ぅあ…っ!」
つい上がってしまった声に驚いて、福井ラダメスは口元を押さえて俯く。
父はふらりと倒れそうになるのを堪える。
「…阿久津ラダメス…ッなんという、ふしだらな事を…!」
「ふしだら?…息子の寝床に入り込む父親が何をおっしゃいます」
「父に冷たいのはそういう訳か…っ?福井ラダメス…!」
本気で切ない顔をした父親に向かい、福井ラダメスがツバを飛ばさんばかりに言い放つ。
「馬鹿な話を真に受けないでくださいっ!!」
そう言って不愉快さを前面に押し出すものの、未だ兄の腕の中にいて…兄は調子に乗って弟の服の合わせから手を入れた。
「バカとは心外だな…ん?ああそうか、イイのはこっちだったか」
「…や…ッ離…ぁっ」
「なななんでお前が福井ラダメスのそんな可愛いコトを知ってるのだっ?!」
「はははっなんででしょうねぇ…ほら福井ラダメス、父上に羨まれてしまったぞ」
福井ラダメスのヘソの脇を、乾いた指先がするりと滑る。
「…ぁ…ちょ、いいかげんに…ッァァ…!」
将軍・福井ラダメスの苦悩の日々は続く。
END
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